タカノグループ本社研修センター新築工事
vol2.鉄✕木のハイブリッド構造に挑め
Prologue
次の100年へ、タカノグループの新拠点を建設
富山の目抜き通り、国道41号線沿いに面したタカノ建設本社敷地内でこの秋、タカノグループの新たな拠点となる研修センターの建設工事が始まった。現社屋を取り壊し、隣接する駐車場と併せた敷地に、2棟構成の3階建てビルを新築する計画だ。創業100年の節目に始動した新拠点建設プロジェクト。タカノグループの次の100年を支える拠点となる、新たなフラグシップビルの建設に迫る。
Member
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現場所長
池田 弘隆
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INTERVIEW
現場主任
真野 朝陽
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現場主任
小川 和大
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現場職員
高野 亮太朗
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現場職員
藤原 楓子
Outline
異素材混合の難しさ
2023年5月、晴れ渡る青空の下、8mを超えるカラマツの柱が、鉄骨で組まれた土台の上にゆっくりと降ろされる。多くの社員や職人たちが固唾をのんで見守る中、現場主任の真野は、一際真剣な眼差しで現場を見つめていた。新社屋に採用された鉄骨と木材のハイブリッド構造は、タカノ建設にとって初めての挑戦だ。最大の難関は、鉄骨と木材が交わる取り合い部。通常の鉄骨工事では鉄骨と鉄骨の継ぎ目にクリアランスと呼ばれるゆとり幅が設けられるが、鉄骨と木材の取り合い部は隙間なく密着させなければならない。どうか、ズレが生じませんように。祈るような気持ちで見つめる中、ズシンと重たい音が響き、柱が基礎の上に立った。職人がリフトピンとボルトで柱を固定し、周囲にOKの合図を送る。見守る仲間から「よし!」と歓声が上がり、真野は、ほっと胸をなで下ろした。
危機一髪、取り付け直前に誤差を発見
数日後、現場では11本の柱と梁が組み上げられて、建物の形が見えてきた。2階から3階まで2層を貫くエントランスの吹き抜けに、大きな柱が整然と並ぶ様子は圧巻だ。次の工程は、木製の格子壁の取り付け作業。一見、飾りのようにも見える格子壁だが、耐力壁として建物を支える重要な構造材のひとつだ。取り付け前に、現場で実測をしていた真野の手が止まる。「えっ、違う…」。鉄骨に耐力壁を取り付けるための金具の位置がズレていたのだ。焦る気持ちを抑えて、現場の職人に修正の指示を出す。位置を慎重に確認して金具を取り付け直し、事なきを得た。「間違っていると気がついた瞬間、かなり動揺しましたが、取り付けの前に気がついて本当によかったです。私たち現場にできることは、とにかく正確に仕上げること。気を抜かず、隅々まで確認を重ねていきたいです」と気を引き締める。
最後までやり抜く、ただそれだけ。
前例のない工事を進めるため、真野はこれまで何ヶ月にも渡って職人たちとの打ち合わせを重ねてきた。鉄骨と木の取り合わせは、工事に携わる鉄骨業者や大工にとっても初めての経験。最初の顔合わせで、職人たちから「これは、時間がかかるぞ」という声が上がった。その言葉どおり、途中で何度も作業工程の見直しや修正があり、スケジュールに遅れが出ている。焦りを感じずにはいられないが「ここまでよくきた。他の誰にもできない仕事だから、最後まで頑張ってやり抜いてほしい」という上司の言葉が支えになっている。「初めての工法で、正直、プレッシャーしかありません。でも、目の前の課題をひとつひとつ乗り越えて、ようやく形が見えてきました。最後までやり切る。それだけです」と、胸の内を語る。
明るい雰囲気が力になる
初めて一緒に仕事をする大工や木工職人とも、次第に打ち解けてきた。「最初はお互いに気を使っていた職人たちとも、休憩時間に野球の話をするなど、気軽に雑談できる関係になれたことが嬉しいです」と、真野は笑顔を見せる。一緒に現場を担当している仲間もそれぞれの持ち場で奮闘していて、チーム全体の明るい雰囲気が現場の力になっているという。柱と耐震壁の上に屋根がかかり、完成予想図どおりの姿に近づいていく。道行く多くの人たちが、歩道や信号待ちの車の中から新社屋の誕生を見守っている。完成まで、あと少し。日に日に暑さを増す現場で、真野たちの挑戦は続く。
Same Project
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